後脛骨筋腱炎というのは、あまり聞きなれない名前かもしれませんね。
具体的には、歩いたり、立っていると、内側のくるぶしのあたりが痛くなる症状です。
また、
- ふくらはぎが痛くなる
- ふくらはぎが夜につる
ということも起きます。
アキレス腱の炎症と、間違えがちな傷病でもあります。
マイナーな症状ですが、臨床上よく遭遇します。
一度なってしまうと、回復するまで時間がかかる症状でもあります。
後脛骨筋腱炎を解説をします!
後脛骨筋炎を解説します!
後脛骨筋腱炎は、その名前通り、後脛骨筋という筋肉に炎症が起きる症状です。
具体的に、痛みの出る場所としましては、内顆(内側のくるぶし)のあたりが痛くなります。
筋腱炎というくらいですから、筋肉や腱に炎症が起きて、痛みが出ます。
後脛骨筋炎は、マラソン、ジョギング、登山など、後脛骨筋を酷使する方に多いです。
また、扁平足の方、肥満の方、高齢の女性にも多い傾向があります。
- ふくらはぎが痛くなる
- ふくらはぎが夜につる
ということも起きます。
炎症がひどくなると、足の内側が腫れることもあります。
先ほども書きましたが、アキレス腱の炎症と、間違えがちな症状です。
アキレス腱炎とは、若干場所が異なります。
一度、なってしまうと回復までに時間がかかる症状でもあります。
後脛骨筋は、ふくらはぎの筋肉の下から出て、内くるぶしの下の腱鞘というストロー状のところを通ります。
その後、舟状骨、全楔状骨、立方骨、第2〜4中足骨底に付着します。
後脛骨筋を解説します!
- 起始 下腿骨膜、脛骨と腓骨の後面
- 停止 舟状骨、全楔状骨、立方骨、第2〜4中足骨底
- 支配神経 脛骨神経
- 主な働き 足関節の屈曲(底屈)、足の内反
後脛骨筋は、わかりやすくいうと、内側のふくらはぎから始まり、内側のくるぶしの下を通り、足の裏の内側にくっついています。
後脛骨筋腱炎の解剖学的なメカニズム
一般的には、回内足が原因とされていますが、最近の研究では、、回内足では無いという研究結果も出てきています。
教科書的には後脛骨筋は、足の内側の縦アーチ(土踏まず)を引き上げる仕事をしています。
回内足の方は、足の内側の縦アーチ(土踏まず)が崩れてしまっているわけですから、後脛骨筋と引っ張り合いをすることになってしまいます。
一日中、後脛骨筋が、足の内側の縦アーチ(土踏まず)と引っ張り合いをしているわけですから、疲労して炎症を起こし、腫れたり痛みが出たり、夜にふくらはぎがつったりする、ということになっています。
ということは、後脛骨筋炎を改善するには、足の内側の縦アーチ(土踏まず)の低下を改善すれば良いということになります。
ところが、縦アーチ(土踏まず)の低下する努力をしても、後脛骨筋炎がなかなか改善しないことがあります。
参考論文
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3414868/
一番、内側縦アーチの構成の貢献度が高いのは後脛骨筋じゃない?
実は、最も内側縦アーチに対する貢献度が高いものは、足底腱膜です。
内側縦アーチに対する貢献度ランキング
- 1位 足底腱膜
- 2位 長・短足底靭帯
- 3位 スプリング靭帯
1位〜3位までの靭帯を切除した際の、アーチ高の下がり方は、以下のデータがあります。
足底腱膜 3.72mm
長・短足底靭帯 0.58mm
スプリング靭帯 0.37mm
全切除した場合は、12.65mm 降下するとされています。(Iaquinto 2010)
後脛骨筋の内側縦アーチに対する貢献度を測った調査では、後脛骨筋が正常通りに機能しても、距骨、踵骨、舟状骨に対する足首のアライメント変化はないとされています。
ただ、後脛骨筋が機能不全になった際には、健常足(靭帯などの損傷のない状態)では、距骨、舟状骨、内側楔状骨の高さが下がります。
健常足でない場合(靭帯が機能していない状態)では、後脛骨筋が機能不全に陥っても、変化がありません。
つまり、靭帯が機能している場合にだけ、後脛骨筋は内側縦アーチの保持に関わるということです。
ちゃんと、靭帯が機能しており、後脛骨筋筋の筋出力低下が原因で内側縦アーチが下がっている場合は、後脛骨筋のトレーニングなどで筋出力を上げることで、内側縦アーチの改善が期待できるという事です!
内側縦アーチを保持する靭帯の機能が壊れている時点(捻挫や骨折などで)で、後脛骨筋がちゃんと働いていようが、働いていなくても、あまり意味はないとも言えます。
内側縦アーチを保持する靭帯の機能が壊れているかどうかというのは、内側縦アーチが改善することが、可能かどうかを考えるうえで重要な視点です。
内側縦アーチを保持する靭帯の機能が壊れている場合には、改善するために、何らかの解決策を探す必要があります。
後脛骨筋炎を改善するための解剖学的な考え方
後脛骨筋炎を改善するためには、内側縦アーチの低下を改善しなければいけません。
内側縦アーチに対して、後脛骨筋の貢献度は高くありません。
内側縦アーチに対しての解剖学的な改善方法をご紹介します。
足の内在筋へのアプローチ
長腓骨筋へのアプローチ
後脛骨筋は、すべての楔状骨に付着しています。
また、長腓骨筋の付着部は、第一中足骨底と内側楔状骨です。
後脛骨筋も長腓骨筋もリスフラン関節に大きくその動きに関係します。
クロスサポートメカニズムと言って、長腓骨筋が機能低下すると、後脛骨筋も機能低下してしまうという、恐ろしい話があります。
逆に、長腓骨筋が機能向上すれば、後脛骨筋も機能向上するということです!
長腓骨筋へアプローチするのは自分では難しいかもしれませんが、自力で改善することも可能です。
後脛骨筋腱炎は治りずらい?
非常に治りづらい症状です。
足は非常に繊細で敏感で感覚が鋭い部位です。
バイオメカニクス・解剖学的なことを散々書きましたが、バイオメカニクス・解剖学的面だけアプローチしても改善するという単純な話ではありません。
いわゆるバイオメカニクス的なことだけやれば改善するわけではないということです。
感覚を変えること
足の痛み全般に言えることですが、足の痛みの大半は組織の損傷と無関係に起こる感覚性の痛みが大半だとされています。
丸印がある部分が足の裏の感覚を感じる神経が集中している場所です。
感覚受容器、侵害受容器、自由神経終末、神経、中枢神経などがバグのようなものを起こし、痛みが出ていることが多いのです。
痛みを改善するにはとにかく様々な刺激を入れて感覚を変えることが最も重要です。
バイオメカニクス・構造面にフォーカスすることも大事ですが、感覚を変えることも大事です。
最後にまとめると
後脛骨筋腱炎には、内側の縦アーチが大きく関わっています。
内側の縦アーチを改善するには感覚を変えることが重要です。