コラム

「身体が硬い・柔らかい・・・」医学的にはどういうこと?

良く言われがちな言葉に

  • 〇〇さんは身体が硬いですね。
  • 〇〇さんは身体が柔らかいですね。

があります。

また、身体が硬い=❌ 身体が柔らかい=◎

と単純に言われがちです。

ざっくりと「身体が硬い・柔らかい」という表現は安易に使われがちですが、具体的に何がどうなっているのかを理解している方は少ない気がします。

「身体が硬い・柔らかい」は医学的にどういうことなのか、をリサーチしてみました。

このあたりの話は深掘りしだすとキリがないので、ざっくりとまとめています。

モビリティとフレキシビリティについて

「身体が硬い・柔らかい」というのは、モビリティとフレキシビリティで言及されることが多いのではないかと思います。

SNSなどで「身体を柔らかくしましょう!」のような発信をしている方のフィードを見ている限りですが。

モビリティとフレキシビリティですが、どちらも身体が動く範囲の能力のことなのですが、少し意味合いが違います。

モビリティとは関節の可動性であり、関節可動域内にて活動的に動ける範囲の能力のことです。

フレキシビリティとは柔軟性であり、筋肉や軟部組織の活動的に動ける範囲の伸張能力と考えられます。

モビリティについて

可動には受動可動域(PROM)と自動可動域(AROM)があります。

自動可動域(AROM)の中で、日常の生活などの動きの中で遂行される可動の範囲である「Functional ROM(FROM)」と呼ばれるものがあります。

つまり「Functional ROM(FROM)」とは関節の機能的活動が、日常生活などで問題なく快適に活動できる範囲の可動域ということです。

関節の機能的な動きを妨げられることにより、起こる可動的が制限されることにより「Dysfunctional」と呼ばれます。

自動可動域(AROM)と「Functional ROM(FROM)」は、ほぼ同じです。

  • 関節の動きの範囲がAROM
  • 動作の範囲がFROM

とも言えます。

自動可動域(AROM)と「Functional ROM(FROM)」のどちらにせよ。いわゆる柔軟性が高くても制限されてしまいます。

自動可動域(AROM)と「Functional ROM(FROM)」が低いと、「身体が固いですね」と言われがちです・・・

フレキシビリティについて

いわゆる柔軟性を妨げる要因としては

  • 皮膚
  • 骨格筋
  • 靭帯
  • 関節包
  • その他の結合組織

などの組織的な問題が挙げられます。

こういった組織的な問題の場合、生まれつき硬い場合、自分でコントロールできることは少ないことが多いです。

驚異的な柔軟性は皮膚をはじめとした身体の結合組織の緩さなどと関係しており、過剰運動症候群(hypermobility)などと呼ばれます。

柔軟性は才能ということが研究結果でわかってきました。

研究で16~18歳を対象にバレエでの後天的に柔軟性獲得をできるのかを調べたものがあります。

その研究によると、後天的にある程度の柔軟性を確保することはできるが、バレエに必要な完璧な柔軟性は難しいという結果になっています。

また、同じストレッチを繰り返していると繰り返しの負荷が一箇所に集中するため、軟部組織が引き伸ばされるなどの悪影響が出やすくなるという研究結果もあります。

バレエダンサーは高すぎる可動域を伴う動きにより、股関節周りの組織や骨に小さなダメージを繰り返し受けていることが多く、これが積み重なってくると股関節の機能低下などを招く可能性があります。

典型的なバレエの動作中のバレリーナの股関節は大きく脱臼しているという研究結果があり、バレエダンサーは高すぎる可動域を伴う動きにより、股関節周りの組織や骨に小さなダメージを繰り返し受けていることが多く、これが積み重なってくると股関節の機能低下などを招く可能性があると言われています。

また、違う研究では5割を超えるバレエダンサーの股関節唇が傷ついていたという結果になっています。

また、関節唇損傷を起こしているにもかかわらず、無症状で痛みを感じていなかったそうです。

普段から、たくさんヨガやストレッチなどに取り組んでいるような方でも腰痛や肩こりになることも珍しくありません。

一般的に身体良いとされるストレッチですが、論文や研究でも賛否両論飛び交っています。

ストレッチも、適切に行うにはかなり難しく、リスクが高いとも言えます。 

柔軟性があるということは、身体に良いと言われがちですが、実はあまり有益なことは少ないのです。

また、過剰な柔軟性を持っている人は普通の人に比べて膝の怪我が多いことがメタ分析による研究で報告されています。

「身体が硬い・柔らかい」から良い悪いは一概には言えない

柔軟性が高いから怪我をしにくい。

柔軟性が高いからスポーツのパフォーマンスが高い。

ここまで読んで頂ければ直結しないのがお分かり頂けると思います。

柔軟性は関節の可動を遂行する上での要素ではあるので、直結しなくても考慮には入れたほうがいいかと思います。

「身体が硬い・柔らかい」を改善するには?

柔軟性の改善には、一番行われるのがストレッチかと思います。

様々な文献で言及されているようにストレッチでは改善は短期的で、長期的にストレッチで柔軟性を維持することは難しいということがわかっています。

先述したとおり、ストレッチにもリスクがあり、専門家の指導の元に行わないとリスクが高いです。

可動性を妨げる要因はたくさんあります。

  • モーターコントロール
  • 関節の求心化、位置覚の変化
  • 心因的要因
  • 疲労
  • 栄養や睡眠不足などのリカバリー不足

などが挙げられます。

また、複雑な神経伝達機構が関わってきます。

つまり直接的に組織が固い・柔らかいというような状態がどうあっても、「安全、快適などと認識した範囲内で動かせる範囲が妨げられた場合と判断した場合」可動性は低下します。

具体的には、慢性的に何か痛みを感じている場合、関節や筋肉の活動も低下します。

可動性の改善には、「安全、快適と認識する範囲を構築すること」が重要になります。

例えば、筋緊張による硬さで制限されたのは柔軟性、可動性のどちらでしょうか?

こういった問題を考えずに

身体が固いからしっかりストレッチしましょう!

身体が固いからマッサージでしっかりほぐしましょう!

などと言われがちですが、そんなに単純な話ではありません。

「身体が固い・柔らかい」と言っても、意外とややこしい話です。

もっと理解が深まると改善法も明白になるのではないでしょうか?

参考文献

https://www.jstage.jst.go.jp/article/cjpt/2010/0/2010_0_AeOS3011/_article/-char/ja/

Kolo FC, Charbonnier C, Pfirrmann CWA, et al. Extreme hip motion in professional ballet dancers: dynamic and morphological evaluation based on magnetic resonance imaging. Skeletal Radiol. 2013;42(5):689-698.

Charbonnier C, Kolo FC, Duthon VB, et al. Assessment of congruence and impingement of the hip joint in professional ballet dancers: a motion capture study. Am J Sports Med. 2011;39(3):557-566.

Gilles B, Christophe FK, Magnenat-Thalmann N, et al. MRI-based assessment of hip joint translations. J Biomech. 2009;42(9):1201-1205.

Foley EC, Bird HA. Hypermobility in dance: asset, not liability. Clin Rheumatol. 2013;32(4):455-461.

Scheper MC, de Vries JE, de Vos R, Verbunt J, Nollet F, Engelbert RHH. Generalized joint hypermobility in professional dancers: a sign of talent or vulnerability? Rheumatology (Oxford). 2013;52(4):651-658.

Steinberg N, Siev-ner I, Peleg S, et al. Extrinsic and intrinsic risk factors associated with injuries in young dancers aged 8–16 years. Journal of Sports Sciences. 2012;30(5):485-495.

Armstrong R, Relph N. Screening Tools as a Predictor of Injury in Dance: Systematic Literature Review and Meta-analysis. Sports Med Open. 2018;4(1):33.

Shan G. Comparison of Repetitive Movements Between Ballet Dancers and Martial Artists: Risk Assessment of Muscle Overuse Injuries and Prevention Strategies. Research in Sports Medicine. 2005;13(1):63-76.

Myers CA, Register BC, Lertwanich P, et al. Role of the Acetabular Labrum and the Iliofemoral Ligament in Hip Stability: An in vitro Biplane Fluoroscopy Study. Am J Sports Med. 2011;39(1_suppl):85-91.

Bonner TF, Colbrunn RW, Bottros JJ, et al. The contribution of the acetabular labrum to hip joint stability: a quantitative analysis using a dynamic three-dimensional robot model. J Biomech Eng. 2015;137(6):061012.

Smith MV, Panchal HB, Ruberte Thiele RA, Sekiya JK. Effect of Acetabular Labrum Tears on Hip Stability and Labral Strain in a Joint Compression Model. Am J Sports Med. 2011;39(1_suppl):103-110.

Harris JD, Gerrie BJ, Varner KE, Lintner DM, McCulloch PC. Radiographic Prevalence of Dysplasia, Cam, and Pincer Deformities in Elite Ballet. Am J Sports Med. 2016;44(1):20-27.

Folci, Marco & Capsoni, Franco. (2016). Arthralgias, fatigue, paresthesias and visceral pain: Can joint hypermobility solve the puzzle? A case report. BMC Musculoskeletal Disorders. 17. 10.1186/s12891-016-0905-2.

  • この記事を書いた人
  • 最新記事

川崎浩司

「ながさき整骨院」代表  川崎浩司

厚生労働大臣免許 柔道整復師

2012年開業 看板も出さず宣伝広告を一切行わない、口コミ中心のスタイルで運営中。

人見知りで人前で喋ったり、目立つことが苦手なのに、うっかり(株)医療情報研究所から2018年に全国の徒手療法家向けのDVDを出版

-コラム

© 2021 東京都豊島区東長崎「ながさき整骨院」