姿勢 解剖学

「姿勢・筋肉のアンバランス」と「痛みの関係」について

  • 〇〇が痛いのは、姿勢が悪いからです。
  • 〇〇が痛いのは、筋肉のバランスが悪いからです。

と言われがちです。

これは、本当なのでしょうか?

実は、「姿勢・筋のアンバランスと痛みは直結してない」と医学的には言われています。

「え?コレクティブエクササイズがあるじゃないか?」

という方もいるかもしれません。

コレクティブエクササイズも確かに有名ですが、最近ではあまり名前を聞かなくなっているのではないでしょうか?

コレクティブエクササイズも、決して効果がないわけではありません。

コレクティブエクササイズで痛みをコレクティブというよりも、エクササイズによって筋活動を変化させて痛みを緩和させていると言われています。

また、実は左右というのは根本的に違います。

左右違う事に意味があります。

「左右差を解消する」というアプローチもありますが、「左右差を拡大する」という発想も必ずしも間違いではありません。

また、左目は全体を、右目は細部を捉えている。

手も同じで左手は物や身体を固定し、右手は細かい操作を行います。

左足は前進する役割があり、右足は後退する役割があります。

こうした左右の差が、同一個体内の客観性を生み、それが人間が生き延びる可能性を高めたと言われています。

ちょっと話が逸れてしまいましたが、「姿勢・筋肉のアンバランス」と「痛みの関係」について解説します。

「姿勢・筋肉のアンバランス」と「痛みの関係」について

まずは、一世を風靡した?コレクティブエクササイズについて解説します。

コレクティブエクササイズは、痛みを軽減または解消し、怪我を防ぐと宣伝されていることがよくあります。

  • 正しい姿勢
  • 正しい使い方
  • 正しい動かし方

を習得できれば、痛みがなくなると言われています。

ここで、問題になるのが「正しい」という客観的な証拠と、この「正しい」からの逸脱が痛みの原因であるという証拠が必要なのです。

実は現時点では、悪い」という定義もなければ、次に「正しい」と定義できる「良い姿勢」というものも、医学的には存在しないのです。

バランスの取れた筋肉というのも同様です。

「コレクティブエクササイズ」の分野で見られる概念の1つに、「良い」姿勢・左右差を消失させ・バランスの取れた筋肉を作りましょうというものです。

現時点では、姿勢や左右の不均衡、筋肉のアンバランスが、実際にどのようにして急性または慢性の痛みを引き起こし、そのメカニズムが適切に説明されるかについては、解明されていません。

左右差=痛みの原因

筋肉のアンバランス=痛みの原因

とは、現時点では言い切れないのです。

  • 正しい姿勢
  • 正しい使い方
  • 正しい動かし方

という文言に、もちろん私も含めてなのですが、簡単に誘惑されてしまいがちです・・・

「正しい」「良い」「悪い」という概念を、基本的な科学的妥当性を実際に確認する必要があります。

痛みについて

痛みの分類は以下に分けられます。

  1. 侵害受容性(炎症性を含む)
  2. 神経系
  3. 侵害可塑性

1 侵害受容性

侵害受容性の痛みの定義は、末梢の組織の侵害受容器から起こる有害な侵襲のことで、組織のダメージや炎症により、末梢の侵害受容器から伝達されます。

具体的には、スポーツ・トレーニングなどの過活動、怪我などの炎症性の痛みなどに関しては、侵害受容性の痛みのカテゴリーになります。

侵害受容性の痛みは、侵害受容器からの伝達により痛みを感じるため、スポーツの試合中などで、テンションが上がっている場合など身体の状態によっては痛みとして認識されない場合もあります。

痛みは中枢神経系で統合されて認識されるため、ストレスや不安、緊張などの感情によっても侵害受容機に影響を与える可能性もあります。

スポーツやトレーニングなどにより、慢性的に激しい運動や活動が体の部位にかかると、負担が大きい部位が炎症を起こす事もあります。

また炎症が起きていなくても、侵害受容器の伝達を変化させ痛みを生じることもあります。

炎症が起きていなくても痛みが出る場合があることから、スポーツ・トレーニングなどの過活動による痛みと認識される場合もあります。

また生活習慣により、組織の炎症からの回復が遅れると痛みが長引く場合があることも、侵害受容性の痛みの特徴です。

2 神経性

この2つが挙げられます。

  1. 神経性の痛みとは、痛みが特定の部分の神経の範囲に関与する
  2. 外傷や疾病などによる体性感覚神経による

神経性の痛みは、〇〇神経痛と言われるものですね。

有名なものですと、顔面神経痛、三叉神経痛、肋間神経痛、坐骨神経痛などでしょうか。

体性感覚神経について解説します。

内受容(Interoception)」というものがあります。

「内受容」と言われても、あまり効き馴染みが無いのではないでしょうか?

内受容の神経レセプターは皮膚組織の下にあります。

内受容の働きとして

  • 筋肉
  • 皮膚
  • 関節
  • 内臓

の生理学的な感覚

つまり

  • 温かい
  • 冷たい
  • 痛い
  • くすぐったい
  • 痒い
  • 触られた感覚
  • 空腹

などの内臓の感覚を感知します。

これらの刺激は、脳にある大脳皮質の島皮質に送られます。

体の刺激を感知するルートは2種類あります。

  1. 脳の一次体性感覚野へ部分へ伝達されるルート
  2. 内受容から島皮質に送られるルート

ちなみに固有感覚受容器も、筋肉や関節に存在し、関節の角度を感じたり、運動の実行、筋肉への伝わり方、姿勢や運動の制御に関係しています。

実は、内受容は感覚神経だけではなくホメオスタシスにも重要な役割を担っています。

日常生活の動作や、スポーツ・トレーニングにおいての統合性も担っています。

そんな内受容からの伝達を受け取るのは自由神経終末というレセプターで、筋膜など、身体の様々な場所に存在しています。

実は筋肉などの筋骨格系には感覚神経が少ししかなく、動作の伝達、感知を担うのは、自由神経終末がメインです。

自由神経終末がは非常に多く存在し、体を動かすキーマンになります。

自由神経終末は、温度や化学物質などの変化、その他さまざまな刺激を感知します。

そのために、テーピングやコンプレッションシャツなどで皮膚が引っ張られる感じなどの、ちょっとした感覚の変化が内受容として認識されることがあり、スポーツ・トレーニングのパフォーマンスや痛みが変化することがあります。

天気やちょっとしたことで感じる「身体の違和感」の正体は、「内受容」によるものが大きいと言われています。

姿勢と痛みについて

「姿勢が悪い」=「痛みやコリの原因」

と長年信じられてきました。

ネットで調べても「姿勢が悪い」=「痛みやコリの原因」のように書かれています。

実際にいくら姿勢を改善する努力をしても、痛みやコリが改善せず、困り果てた方もいると思います。

いったいなぜでしょうか?

なぜなら、最近の研究では「痛みやコリと姿勢は無関係ではないか?」と言われてきているのです。

現時点で明らかになっていることは

  • 「医学的に良い姿勢というのは存在しない」
  • 「良い姿勢と悪い姿勢の基準はない」
  • 「コリや痛みの原因」=「姿勢ではなく運動の問題」

ということがわかってきています。

痛みやコリのメカニズムは複雑で「痛い=姿勢が悪い」ということではないということです。

参考論文

The science behind why assessing and blaming posture for pain is BS

この研究、追跡調査によると骨盤の傾斜や腰椎曲線と頸椎のアライメントなどと、痛みに相関関係はないと発表されています。

脊椎曲線の変化は痛みとは、ほとんど関係がないということですね。

年を取るにつれて姿勢が変化し、これは痛みのない人にも起こります。

逆に、痛みがあるために骨盤の傾斜や腰椎曲線と頸椎のアライメントに問題が起きる可能性もあると書かれています。

もちろん、この研究結果は100%ではありません。

若干ではありますが、姿勢が悪いために痛みが出る方もいるということです。

筋肉のバランスが悪さと痛みについて

参考論文

The definitive guide to posture & pain in 3 minutes flat!

この研究によると、痛みは姿勢が問題なんではなく、運動性がないことが問題ということです。

運動性がないことが、姿勢の逸脱につながることを示す客観的データが不足しており、運動性が乏しいため姿勢が悪くなるということではないということです。

姿勢は、筋腱だけの問題ではなく、視覚系や前庭系などの他の要因も姿勢に影響を与える可能性があると書かれています。

単に「短くて硬い」筋肉だけが姿勢に与える影響ではないということ。

「長くて柔らかい」筋肉に変えても姿勢に与える影響のあくまで一因子に過ぎないようです。

単にストレッチなどで「長くて柔らかい」筋肉にして、姿勢を努力しても、痛みを引き起こさないとはいえないようです。

姿勢よりもうまく動けないことが問題

参考論文

Do you need your joints to be 'centered'? – Does it really matter?

関節や筋肉の偏った動き、うまく動かない関節が多いことなどが、痛みの要因として大きいとのこと。

ただ、闇雲にストレッチやエクササイズを行っても改善することは難しいでしょう。

筋肉のアンバランスのみが、運動に影響しているわけではありません。

視覚系や前庭系などの他の要因も運動には影響します。

関節や筋肉の動作パターンをなどを実際に把握する方法がなければ、関節や筋肉を「修正」することは困難なのです。

また、明確な相関パターンが見られない場合、痛みの要因を特定するのは難しいようです。

「痛みやコリと姿勢は無関係ではないか?」と言われてきています。

繰り返しになりますが

  • 「医学的に良い姿勢というのは存在しない」
  • 「良い姿勢と悪い姿勢の基準はない」
  • 「コリや痛みの原因」=「姿勢ではなく運動の問題」

最後に

  • 正しい姿勢
  • 正しい使い方
  • 正しい動かし方

を習得できれば、痛みがなくなると言われています。

ここで、問題になるのが「正しい」という客観的な証拠と、この「正しい」からの逸脱が痛みの原因であるという証拠が必要なのです。

実は現時点では、悪い」という定義もなければ、次に「正しい」と定義できる「良い姿勢」というものも、医学的には存在しないのです。

バランスの取れた筋肉というのも同様です。

「コレクティブエクササイズ」の分野で見られる概念の1つに、「良い」姿勢・左右差を消失させ・バランスの取れた筋肉を作りましょうというものです。

現時点では、姿勢や左右の不均衡、筋肉のアンバランスが、実際にどのようにして急性または慢性の痛みを引き起こし、そのメカニズムが適切に説明されるかについては、解明されていません。

左右差=痛みの原因

筋肉のアンバランス=痛みの原因

とは、現時点では言い切れないのです。

  • 正しい姿勢
  • 正しい使い方
  • 正しい動かし方

という文言に、もちろん私も含めてなのですが、簡単に誘惑されてしまいがちです・・・

「正しい」「良い」「悪い」という概念を、基本的な科学的妥当性を実際に確認する必要があります。

参考文献

https://www.physio-network.com/corrective-exercise-what-are-we-correcting/

  • この記事を書いた人
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川崎浩司

「ながさき整骨院」代表  川崎浩司

厚生労働大臣免許 柔道整復師

2012年開業 目立つ看板を出さずひっそりと口コミ中心のスタイルで運営中。

人見知りで人前で喋ったり、目立つことが苦手なのに、うっかり(株)医療情報研究所から2018年に全国の徒手療法家向けのDVDを出版

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