肘関節の機能解剖学
肘関節は蝶番関節であり、骨性支持を持つ比較的安定した関節である。
この肘関節は3つの関節より構成される。
- 上腕尺骨関節
- 上腕橈骨関節
- 橈尺関節
肘関節の検査には、これらの関節と周囲の軟部組織が含まれる。
視診
肘外偏角
上肢を解剖学的肢位、つまり手掌側を前方にして肘関節を伸展したとき、上腕と前腕の軸は肘外偏角として知られている外反角を形成する。
正常な肘外偏角は男性は約5度、女性は10〜15度の間である。
肘外偏角によって肘関節は体側の陥凹、腸骨稜の上方に直接適合する。
その角度は、重いものを持った時に特に強くなる。
骨の触診
内側上顆
内側上顆は上腕骨遠位端の内側に位置する。
内側上顆稜
顆部から上方へ移動し、骨綾を触診する。
その稜をたどりながら、表面に骨性突起が無いか調べる。
時々、小さな骨性突起が内側上顆稜に見つかることがあり、正中神経の圧迫を引き起こす原因になることがある。
肘頭
肘頭は尺骨上縁にある大きな突起である。
尺骨縁
肘頭窩
外側上窩
外側上窩は肘頭の外側に位置している。
上腕骨の外側上窩稜
橈骨頭
軟部組織の触診
肘関節の軟部組織の検査は、4つの部分に分けられる。
- 内側面
- 後面
- 外側面
- 前面
内側面
肩を軽度伸展・外転位で、肘を90度屈曲位にした際、内側面の軟部組織構造は最もわかりやすい。
尺骨神経
尺骨神経は、内側上窩と肘頭の間の溝にある。
この部位の軟部組織の肥厚は、瘢痕形成による肥厚であるが、これが神経を圧迫する原因となり、患者の環指と、小指にびりびりする感じを生じる。
尺骨神経のこの部位は、一般にビリビリ感じるので、「奇妙な骨」として知られている。
尺骨神経の抹消への走行は、肘関節を超えて、尺側手根屈筋内を通り抜け、前腕に達している。
手関節屈筋・回内筋群
この筋群から4つの筋肉からなる。
- 円回内筋
- 橈側手根屈筋
- 長掌筋
- 尺側手根屈筋
である。
これらの4つの筋肉は内側上窩の共同腱に起始部をもち、それから前腕に向かってそれぞれの走行に分かれる。
障害を受けていると、テニス、ゴルフ、ねじ回しなどの手関節屈曲、前腕回内を必要とする動作に際して筋膜や起始部に圧痛が生じやすい。
内側側副靱帯
顆上リンパ節
後面
肘頭滑液包
上腕三頭筋
この名の示すように、上腕三頭筋は3つの頭をもつ。
それらは長頭、外側頭、内側頭である。
長頭は肩甲上腕関節と肘関節にまたがる2関節筋である。
外側面
手関節伸筋群
手関節伸筋群は外側上顆及び、その上の外顆上稜より起こり、一般に「3つの動く小塊」と呼ばれる。
この筋群は3つの筋よりなる。
- 腕橈骨筋
- 長橈側手根伸筋
- 短橈側手根伸筋
である。
腕橈骨筋は、手関節伸筋群の一部と考えられることが、実際には肘屈筋としての機能をもつ。
腕橈骨筋、長橈側手根伸筋、短橈側手根伸筋は(特に短橈側手根伸筋)はテニス肘と関係がある。
この疼痛が、肩にまで関連痛を起こすことがある。
外側側副靭帯
輪状靭帯
前面
肘窩
肘窩は三角形状で、外側縁は腕橈骨筋よりなり、内側縁は円回内筋よりなる。
肘窩の上縁は上腕骨の両上顆間い引かれる想像上の線よりなっている。
肘窩の外側から内側の間を通り抜ける組織は
- 上腕二頭筋
- 上腕動脈
- 正中神経
- 筋皮神経
- である。
上腕二頭筋
上腕二頭筋腱と上腕二頭筋の筋腹は回外位で拳を作り、テーブルの端の下におき、テーブルを持ち上げるようにすると最も触診しやすくなる。
腱は長く、強く緊張し、腕橈骨筋の内側で突出する。
上腕動脈
上腕動脈の拍動は、上腕二頭筋腱のすぐ内側で感じ取れる。
正中神経
正中神経は、丸く、管状で上腕動脈のすぐ内側にある。
また正中神経の走行は肘関節から遠位に伸び、前腕に入るところで円回内筋を貫通している。
筋皮神経
上腕二頭筋は上腕二頭筋研の外側にあり、前腕の知覚を支配する。
神経は触診できない。
関節可動域
基本的な肘関節の可動域は
- 肘屈曲
- 肘伸展
- 前腕回外
- 前腕回内
の4つの動きからなっている。
屈曲と伸展は主に上腕尺骨関節、上腕橈骨関節で起こり、回内・回外は肘関節と手関節の両方の橈尺関節で起こる。
回内・回外の際、橈骨骨頭は上腕骨小頭に対応して、腕橈関節で回転する。
自動関節可動域
屈曲 135度
伸展 0〜−5度
回外 90度
回内 90度