今日はたまには、趣向を変えて足ではなく、体幹部の筋肉。
その名も横隔膜でございます。
横隔膜は、地味な筋肉ですが、生命にも直結する臨床上も非常に重要な筋肉です。
横隔膜を解説します。
余談ですが、焼肉屋さんでよく見る名前のハラミ、サガリは牛の横隔膜です。
腹側の肋骨に接する部分をハラミ。
背側の腰椎に接する部分をサガリと言います。
横隔膜は哺乳類にのみ存在します。
横隔膜の解剖学
横隔膜の起始部
- 肋骨部 下位6本の肋骨上縁
- 胸骨部 剣状突起の後面
- 脚部 右脚と左脚があり、腰椎1~3の椎体に付着する。
横隔膜の停止部
横隔膜中央部の腱膜(腱中心)
横隔膜の特徴
横隔膜は、身体で最も左右差のある筋肉です。
右側が左側より少し高いです。
これは肝臓があるためです。
また、横隔膜は筋腱性組織であり、体幹内の空間を二分して、「腹腔」「胸腔」分けています。
実は横隔膜は、かなり薄っぺらく頼りなさげな筋という印象です。
横隔膜のバイオメカニクス
横隔膜は、人間が生命を維持する上で欠かせない筋です。
先天的に横隔膜が欠損していれば、生命の維持は不可能です。
なぜかというと、横隔膜は、安静持の吸息活動の70~80%を担っています。
残りの20〜30%は、斜角筋や肋間筋が働いてくれています。
横隔膜が機能しなくなるということは、吸息活動の8割がダメになるということです。
これは厳しいです。
横隔膜の動き
横隔膜は吸気時に働き、収縮して下降していきます。
吸気時は、横隔膜の下にある腹横筋などの腹筋群の張力による腹圧の上昇によって抵抗を受けます。
安静時の吸気では、横隔膜は約1.5cm下降します。
強制吸気では、6~10cmと大幅に増加します。
最大吸気状態では、右側はTh11まで、左側はTh12まで下がります。
腹腔は、臓器があるため、液体で満たされています。
胸腔は気体で満たされています。
液体のほうが体積が変わりにくいため、抵抗がかかった際に、腹部側が固定され、胸腔側が動きます。
吸気時の、腹圧の上昇は下部肋骨を側方へ広げます。
いわゆる、バケツハンドル運動です。
上部肋骨がポンプハンドル運動、下部肋骨がバケツハンドル運動をしています。
横隔膜と関連する筋肉
横隔膜は、腱膜性弓という部分で大腰筋と腰方形筋と繋がりがあります。
つまり、横隔膜が働くには、大腰筋や腰方形筋の機能が必要ということです。
また、横隔膜の緊張すると、大腰筋や腰方形筋に伝わり、大腰筋や腰方形筋が緊張しやすくなります。
腰方形筋は、下位肋骨の安定性に関わります。
大腰筋は、腰椎(腰の骨)の安定性に大きな影響があります。
また、筋肉は、一端が固定点となることで、もう一端が可動点となり、収縮が可能です。
固定点も可動点も両方が動いてしまっては、効率の良い収縮はできなくなります。
大腰筋の腰椎を垂直方向に安定させるという機能のためには、腹横筋下部、腰椎・骨盤帯の安定性が必須であることがわかります。
また、吸気時の腹部からの抵抗は横隔膜の停止部の「腱中心」を安定させます。
このことにより、可動点と固定点が逆転して、横隔膜肋骨部の筋収縮によって肋骨を挙上させます。
つまり、横隔膜は中位、下位胸郭を前後左右に広げる働きがあります。
横隔膜の機能は下位胸郭を広げるには、姿勢の不良アライメントを改善する上でも重要です。
横隔膜は随意筋?不随意筋?
横隔膜は、普段は意識することなく動いています。
言わば無意識です。
ということは不随意筋なのかな?・・・
と思われがちですが、横隔膜は随意筋です。
四肢の筋と同じで、意識して動かすことが可能です。
横隔膜は例外的に、自律神経の支配も受けています。
つまり、意識して息を止める(=横隔膜の動きを止める)ことも可能ということです。
自律神経の支配も受けていますから、寝ている間にも(無意識)で滞りなく動かすことが可能です。
立位や座位の方が呼吸がしやすい???
「仰臥位」と「立位や座位」だと、「立位や座位」の方が呼吸がしやすい場合があります。
これは、内臓の位置による影響です。
立位や座位では、重力の影響を受けて、内臓がやや下がります。
呼吸疾患などでは、「立位や座位」で呼吸が楽になることがあります。
吸気で横隔膜が下がると、当然、腹腔にある臓器に圧がかかります。
圧がかかるということは、「跳ね返す力」が発生します。
つまり、重力の影響で臓器が下がれば、臓器に圧がかかるタイミングが遅くなります。
すると、吸気運動に対して抵抗が少なくなるということでもあります。