新規の患者さんに意外とよく言われることがあります。
前に通っていたところで言われたとのことですが。
「腰痛の原因は〜身体の歪みです〜」
「腰痛の原因は〜骨盤の歪みです〜」
「腰痛の原因は〜背骨の歪みです〜」
と言われたとのことです。
実際雑誌やネットなどでもこう言う風に書かれていることが多いです。
「身体のゆがみ・骨盤の歪み・背骨の歪みを矯正などで治せば腰痛が完治する」
と言う論調になりがちです。
実際、どうなのかと言うのをリサーチしてみました。
研究データ不足で痛みと歪みの相関性は不明
参考論文
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1420782/
- どのくらいの刺激量なのか?
- どのくらいの負荷をかけているのか?
- 刺激量が一定で行えるのか?
- 何をもって定量化するのか?
各種徒手療法による矯正は、術者により精度などが異なることもあり、研究対象としては難しいと思われます。
各種矯正というものは研究にならないとも言えます。
有効性などに関しても、フォームローラーのように可動域やVAS(Visual Analog Scale)でしか出せないため、信頼性に関して疑わしいとも言えます。
そういった意味では、矯正に関しては基礎研究が圧倒的に足らないとも言えます。
腰痛と身体のゆがみ・骨盤の歪み・背骨の歪みと相関性については、不明です。
「腰痛の原因は〜身体の歪みです〜」
「腰痛の原因は〜骨盤の歪みです〜」
「腰痛の原因は〜背骨の歪みです〜」
などと言われたら疑いましょう。
そもそも誤解があるのが、骨盤矯正や背骨の矯正というと、骨盤や背骨のPositionを変える事と勘違いされています。
矯正というと、ズレた関節の位置を矯正するイメージという事ですね。
人の身体はプラモデルではないのですから、そんなことはできません。
矯正と言っても、関節包などのレセプターに刺激を加えているだけです。
関節包などのレセプターに刺激が加わる事で、中枢神経や脳からのフィードバックが発生し、関節・筋肉・神経に変化が起きることがあります。
「矯正をしてズレた関節の位置を矯正する」などと言われたら疑いましょう。
良く背骨の歪み、骨盤の歪みの指標にされる短下肢評価などもレントゲンなどの画像診断以外では信頼性に乏しいという研究結果があります。
画像診断以外での短下肢評価の精度は極めて低く、信頼するに値せず、適切な治療を計画するには、脚長不一致(LLD)を定量化するために、正確で信頼性の高い検査が欠かせないということです。
腰痛は徒手療法で改善する?
腰痛改善するためには、徒手療法よりもエクササイズが重要ということです。
腰痛のSystematic Review and Meta-analysis
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26752509
現在のエビデンスは、エクササイズ単独、または教育と組み合わせた各種エクササイズが腰痛の予防に関して有効であることを示唆しています。
教育のみ、コルセット、インソールなど、他の介入は腰痛を予防するとは言えない。
教育、トレーニング、徒手療法は、エビデンスの質が低いため腰痛を防ぐかどうかは不明。
となっています。
そもそも痛みのメカニズムを知らずに、推測だけで「腰痛治します!」と豪語している方が多い印象です。
- exercise 運動、稽古、実習、演習
- training 訓練、養成、鍛錬、練習
長くなるので割愛しますが、トレーニングとエクササイズは意味合いが違います。
また慢性腰痛で感じる硬く感じるような鈍痛では、実際組織的な硬さと関係なく感じます。
「腰痛良くなった=感じなくなった」という感知を変えるのはプラシーボでも変わります。
徒手療法を受けて、「腰痛良くなった=感じなくなった」というのは、プラシーボでも変わります。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28851924
そもそも腰痛は症状であり、診断名ではありません、
Joint By Joint Theoryで腰部は安定を担っており、腰椎のスタビリティが低下して腰痛になると言われています。
「腰痛」に至るまでにはこのneural 、mechanical の関係があり、スタビリティ低下で腰痛になるわけではありません。
腰椎は可動性が少なく安定性部位で周囲の可動性の部位で補てんするという説もあります。
ただ腰部の安定性の低下で、腰痛に直結するとは言えません。
腰痛が症状という事は、主観要素が含まれるという事。
特に胸腰筋膜に含まれるレセプターには自由神経終末が多く存在する。
胸腰筋膜は腹斜筋群もその一部に含まれ、腰椎部の少ない回旋可動を補填する可能性はあります。
腰椎部の少ない回旋可動を補填する事で、胸腰筋膜の剪断応力ストレスは向上する場合もあります。
ところがそういったシチュエーションが起きても痛みに直結するかは別の話です。
参考論文
Are Stability and Instability Relevant Concepts for Back Pain?
また、椎間板が痛みの原因になり得るのかどうか?
という議論に関しても終止符が打たれようとしています。
痛がる人の椎間板・軟骨終板には病理的神経新生と支配(pathologic neoinnervation)が発生しています。
参考論文
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3945018/
「治る=痛みがなくなる」ではない?
器質的疾患も含めて「治します」という人達の「治る」の定義は「治る=痛みがなくなる」というのがほとんどです。
- 実際に組織に何が起こっているか?
- どういう介入において、どのような変化があって痛みがなくなったのか?
その大事な部分が明白ではありません。
そもそも痛みというのは、徒手療法家が介入しなくても痛みが無くなることはあります。
幸か不幸か、多くの急性の痛みの場合、2週間もすれば痛みは緩和されます。
その期間の痛みをどれだけ緩和させて、痛みの積分値を下げることができるかが重要とも言えます。
不適切な介入をすることで、機能的メカニクスを狂わせる可能性もあります。
自戒の念を込めて、介入する場合は自覚と責任を!