SSC運動について解説します。
SSC運動とは、伸張-短縮サイクル運動のことです。
SSCとは、Stretch-Shortening Cycleの神経的機構のことです。
SSC運動をわかりやすく言うと
「反動をつけた垂直跳び」です。
反動をつけない垂直跳びとは違いますよね。
「反動なし」と「反動あり」では、「反動あり」の方が高く跳ぶことができると予想できます。
SSC運動というと、難しく聞こえますが、人間の運動においては自然な形態です。
筋や腱が伸張されたあと、即座に短縮することによって、上のような効果を生むことができます。
- 力、パワーの出力向上
- エネルギー消費量の減少
という何気なく行なっているSSC運動について解説します。
SSC運動3つの局面
- エキセントリック局面
- 償却局面
- コンセントリック局面
エキセントリック収縮
エキセントリック局面とは、予備緊張状態の筋が、外力によって引き伸ばされながら力を発揮する局面です。
エキセントリック収縮では、筋肉の伸張性収縮が起こり、腱が引き伸ばされ、弾性エネルギーを貯蔵し、筋紡錘とゴルジ腱器官が興奮します。
償却局面
焼却局面とは、切り返し局面のことです。
焼却局面とは、エキセントリック局面の終了からコンセントリック局面への移行期のことです。
筋紡錘とゴルジ腱器官の興奮がそれぞれⅠa繊維、Ⅰb繊維を通じて脊髄に伝わります。
ただし、ゴルジ腱反射が起きてはSSCは成り立たないため、上位中枢がその反射を制御します。
この局面が短ければ短いほど、次のコンセントリック局面で爆発的な力を発揮できます。
コンセントリック局面
コンセントリック局面とは、筋肉が短縮しながら力を発揮する局面のことです。
SSC運動で、最大の役割を果たす伸張反射の作用がここで発揮されます。
コンセントリック局面では、腱に貯め込んだ弾性エネルギーも利用され、2つの作用により爆発的に力を発揮することが可能となります。
ゴルジ腱反射
ゴルジ腱反射とは,筋腱に持続的な伸張が加わるとその筋の収縮を抑制する反射のことです。
簡単に持続的に筋肉をストレッチをすると、筋肉の活動を抑制する反射のことです。
ゴルジ腱反射がありますから、ストレッチを行っても筋肉は伸びないと言われるわけですね。
スプリント中の運動は、SSC運動の繰り返し
スプリント中の運動は、コンセントリック局面、償却局面、エキセントリック収縮の繰り返しから成り立っています。
スポーツやトレーニングでは、SSC運動を利用して、硬めた筋腱を急激に引き伸ばして、一気に強い力で縮ませることで、最大限のパフォーマンスを出しましょう!
ということですね。
SSC運動を知っておくのと知らないのでは、スポーツやトレーニングに対する考え方が変わってきます。
SSC運動を利用することで「短縮のみ」で行うよりも、大きな力を発揮することができます。
SSC運動を利用する4つのメリット
1 運動中にアイソメトリック局面が加わることで得られるメリット
運動中にアイソメトリック局面が加わることで、速度の影響が取り除かれます。
速度の影響が取り除かれることで、一時的に高い力を発揮できる状態をつくることができます。
2 力を発揮させる時間が長くとれることで得られるメリット
筋力を発揮するには時間がかかります。
例えば、いきなり運動を始めて、すぐに最大の力を出せるわけではありません。
SSC運動を行うことで、最初にエキセントリック収縮から入りながら力を発揮する時間が長くとれるます。
力を発揮する時間を長く取ることで、最大筋力に近い力を発揮できるようになります。
3 筋肉と腱の弾性エネルギーを蓄えられることで得られるメリット
筋肉と腱の弾性エネルギーを蓄えて使うということは、「バネ」のことです。
SSC運動で、筋肉や腱が外力によって引き伸ばされると、弾性エネルギーが蓄えられます。
わかりやすく言うと、ゴムを引っ張る感じです。
ゴムを引っ張ると、ゴムは縮もうとする力が蓄えられます。
SSC運動で、筋肉や腱が外力によって引き伸ばされ、蓄えられた弾性エネルギーが跳ね返り運動として、筋出力を高めることになります。
SSC運動で、筋肉や腱に蓄えることができる弾性エネルギーは、筋肉や腱を引き伸ばすために必要な力の大きさきと筋肉や伸びる量によって変わります。
4 弾性エネルギーを上手く利用できる神経メカニズムを利用できる
筋肉や腱には、長さや張力を感知する「筋紡錘」「腱紡錘」と呼ばれる感覚受容器と呼ばれるセンサーのようなものがあります。
例えばスポーツなどの切り返し運動中、連続のハードルでのジャンプ中に、足が地面に接地した時には筋肉や腱の長さと、発揮される力の両方が急激に変化します。
筋肉や腱は急激に強く伸張されると、同時に即座に張力を発揮するということです。
伸張反射(長さのフィードバック反射)
伸長反射は脊髄反射です。
筋線維と並列に並んで配置されてある筋紡錘(感覚受容器)が、急激な筋肉の長さの変化を察知して、元の長さに維持しようとさせる反射のことです。
ゴルジ腱反射(力のフィードバック)
ゴルジ腱反射も脊髄反射です。
筋線維と直列に配置されてある腱の腱紡錘(感覚受容器)が、急激な張力変化を感知して、筋肉の活動を抑制させる反射のことです。
伸張反射とゴルジ腱反射の関係
スポーツなどの切り返し運動において、力のフィードバックと長さのフィードバックは相反する反射で起こっています。
伸張反射はより筋力において強い力を発揮させて、ゴルジ腱反射は筋肉の出力を抑えます。
短時間で強い力を発揮するには、ゴルジ腱反射を抑制して、伸張反射を促進させるということです。
筋力が強くても、伸張反射とゴルジ腱反射の効率が悪ければ、エネルギー消費の少ない、強い筋出力での切り返し運動はできません。
バネ(伸張反射とゴルジ腱反射)をうまく使う要因
- 筋肉や腱の長さ
- 速筋線維の比率
- 最大筋力アップする
- 練習して即時的に発揮できる筋力を高める(ゴルジ腱反射を抑え、伸張反射を促す)
- 腱の太さ
- 筋肉、腱の伸びる量を増やす
- 練習で弾性エネルギーを蓄えやすい動作を習得する
SSC運動がうまく行えるかどうかは、スポーツのハイパフォーマンスには必須の能力です。
SSC運動がうまくできるということは、スポーツでいわれる身体能力の高い選手と言えます。
筋力トレーニングでのSSC運動を使うメリット
伸張反射とゴルジ腱反射も脊髄反射です。
脊髄反射ということは、脳を使っていません。
脳を使って筋力トレーニングで追い込むと、心理的な限界でできなくなってしまうことがあります。
SSC運動は脊髄反射ですから、脳を介在しません。
つまり、SSC運動を使うことで、脳の抑制を取り除いた状態で追い込むことができます。
怪我などのリスクを考えると、懸垂(チンニング)がオススメです。
まとめ
SSC運動は3つの局面があります。
- エキセントリック局面
- 償却局面
- コンセントリック局面
SSC運動を使うことで、バネ(伸張反射とゴルジ腱反射)をうまく使うことができます。
- 筋肉や腱の長さ
- 速筋線維の比率
- 最大筋力アップする
- 練習して即時的に発揮できる筋力を高める(ゴルジ腱反射を抑え、伸張反射を促す)
- 腱の太さ
- 筋肉、腱の伸びる量を増やす
- 練習で弾性エネルギーを蓄えやすい動作を習得する
SSC運動がうまく行えるかどうかは、スポーツのハイパフォーマンスには必須の能力です。
SSC運動がうまくできるということは、スポーツでいわれる身体能力の高い選手と言えます。
参考論文