筋筋膜、Fasciaと名前を雑誌やSNS,テレビなどのメディアでもよく見かけるようになりました。
- 筋膜ストレッチで骨盤矯正!
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- 筋膜を意識するとダイエット効果が高い!
- 筋膜を意識することで小顔に!
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などでしょうか。
実際に、患者さんからは
「良いことばかり言われているけど何が本当なの?」
と質問されることもあります。
筋膜って名前はよく聞くけど、よくわからない存在。
そんな筋筋膜、Fasciaについて解説します。
筋膜について
筋膜とは、教科書的には筋肉やその他内臓を結合・安定化し、包みこみ、分離する主にコラーゲン質の結合組織の膜の総称と定義されています。
筋膜は全身の組織を包み込んでいるだけでなく、組織間の結合も担う結合組織です。
実は、これらの組織は筋膜という単語一つでまとめるのは困難であり、解剖学的に詳細な名称付けが必要とされており、専門家の間でも分類方法が定まっていないのが現状です。
一昔前までは、筋膜=Fasciaと言われてきましたが、現在は筋膜≠Fasciaと言われています。
筋膜と認識されている薄皮様の膜組織は筋上膜になります。
筋の内部の筋束を覆う筋周膜、筋線維を覆う筋内膜もシームレスに繋がっていることも明らかになっていますが、一概にひとつの膜構造とは言えないのが実情です。
そのため「筋膜」と平面帯で認識はできないと言われてきています。
なぜ、筋膜の研究が遅れていたかと言いますと、、、
昔は解剖学、外科手術では疎性結合組織は目的の組織に対して邪魔者として扱われてきました。
そのため、Fascia本来の機能や構造の認識が遅れていたと言われています。
徒手療法家の間では、以前から筋膜には注目されていました。
オステオパシーなどで提唱されてから言われから100年以上。
ロルフィングで提唱されて50年近く?
アナトミートレインでも提唱されてすでに30年くらいの歴史。
身体って繋がっているのか?
というのは、長年の永遠のテーマだったわけです。
筋膜は繋がっている?
- 解剖学的な繋がりがあるのか?
- 機能的(力の伝達など)の繋がりがあるのか?
- その他の関係性があるのか?
というのが、長年のテーマでした。
解剖学的な繋がりがあるのか?
1の解剖学的な繋がりで、筋連結というのは存在します。
直接連結されていなくても、間接的に結合組織を介するなどして連結を伴っています。
代表的なのが、胸腰筋膜を介した臀部と腰部の連結や恥骨部を介した内転部と腹部の連結です。
内転部と腹部の連結には、運動機能的な関わりがある部分が多いです。
重要なのは連結含め結合組織は、性状、形態が異なってきます。
痩せているか、肥満なのかでも膜組織の厚みが異なります。
また、青年期では四肢に膜組織の厚みが増し、老年期では脊柱部に厚みが高くなる傾向にもあるようです。
つまり何が言いたいかというと、解剖学的に程度の繋がりがあっても、それぞれの身体によって組織の状態は変わるという事です。
組織形状や性状が変わると線維構造も変わりますので、全てが全て連結があったとしても同じような張力があるとは限らないということです。
ドイツのスポーツ科学の研究者のWilkeの研究では、下腿をストレッチするとハムストリングの結合組織までストレッチされたというものがありますが、
このような解剖学的関係性はあっても疑いはないでしょう。
ところが、下腿に火傷などの瘢痕組織があったり、打撲性の外傷があった際に同じ効果があるかはわかりません。
筋膜が機能的に関連するのか?
- 足底を刺激したら繋がっている頭まで届いて頭痛が緩和した
- 脚の外側を刺激したら腹部の外側の安定がでた
現時点では、研究中の段階で解明されていないようです。
現時点で、提起されているのはトリガーポイント(過敏化した侵害受容)が関連部位で変化を伴ったのではないか。
と言われています。
Fascia、皮膚などには多くの受容器があり、感覚神経などを脊髄後根神経節を経由して中枢へ送られます。
フォームローラーで、組織的に変化はないものの、関節可動域が向上したというのと同じようなメカニズムかと思われます。
- チキソトロピー
- 循環改善
- ヒアルロン酸生成
ではなく、神経的な求心性の刺激が加わることによる主観的な変化と言われています。
刺激が中枢にフィードバックされることで、身体になんらかの変化が起きたと、現在では理解されているようです。
となると、筋膜が機能的に関連するのかというのは、筋筋膜の組織的なものだけでは説明がつかず、話の収拾がつかなくなりますね・・・
Fasciaについて
Fasciaの研究は先ほども書きましたが、その他の組織の研究から比べると、まだまだ始まったばかりという状況です。
Fasciaは未だに様々な分野で議論されています。
当初筋膜と訳されてしまったFasciaは筋肉の周りの膜といった膜状の構造体だけではありません。
「筋膜」と平面帯で認識してしまうとその本来のFaciaのもつ独自性を失うことになります。
Fasciaはいわゆる筋膜といわれていた筋肉や臓器を覆っているものという認識から全身に行きわたる構造体、機能形態として認識されるようになってきました。
Fasciaは周囲の疎性結合組織(網の目構造の膠原繊維に液体の基質と細胞を含んだ組織、俗に言われる筋膜の筋筋膜は密性結合組織で膠原繊維の密度が高く基質が少ない)を含むものと定義されています。
筋肉を覆うような膜は筋上膜ですが、筋肉の内部には筋束を筋周膜、筋線維を筋内膜が覆っています。
それぞれのレベルで、膜が包んでいるのでラップしているのではなくシームレスな構造となっています。
Fascia Research SocietyでのStatementではFasciaは結合組織の軟部組織であり立体網目状のネットワークシステムとして機能的に重要なシステムとされています。
超音波での2Dエコーで膜組織を見られてきた変遷を経て、Dr. Guimberteauに代表される3Dマイクロスコープなどにより、細部構造まで観察できるようになりました。
そして筋膜は、その単なる膜構造から立体構造のマトリックスとして概念が変化を遂げてきています。
近年のFasciaの研究では、膜組織だけでなくECM細胞外マトリックス、細胞学、流体力学、生化学などの見地からも考察が広がっています。
Fasciaというものはコラーゲン、エラスチンなどの線維構造、ヒアルロン酸などの基質構造を含む立体的網目構造を基本として全身に繋がるネットワークシステムであるとFascia Reserach Societyではまとめられています。
Fasciaは、解剖学組織ではなくひとつの機能構造体であるという認識が重要です。
つまり、Fasciaは膜ではなく、立体的網目状の機能構造体であり、解剖学的のみでなく様々な見地から考察しなければならないものであるという事です。
参考動画
驚くことに、Fasciaの内部には毛細血管が張り巡らされて、さらにはリンパ管、脂肪細胞なども存在して、ミクロのレベルで生命体の微細構造として動的平衡を維持し活動を営んでいます。
またFasciaの疎性結合組織には末梢神経が滑走していて、神経の周りにはSheath状の膜構造が連結しています。
その神経は網目状構造体の中で周囲の毛細血管が連続して走行し、それぞれが独立したものでなく、連続体として構成されています。
またFascia組織には感覚神経のレセプターが豊富に存在し、またFasciacyteというFascia自体の細胞が存在していることが言われています。
伸張性の機械ストレスにより、Fascia内の細胞は活性し、線維構造の構築に影響を与えています。
Fasciaはただの膜構造である筋筋膜だけではなく、広義の意味で捉えると見方が大きく変わってきます。
Fasciaは繋がっている?
非常にはっきりしない回答になります。
実際に解剖学的に繋がっている部分に関しては、機能的な部分は未解明です。
組織は与えられた機械ストレスによって、構造を変化させるので筋の活動などの影響を受けます。
Fascia内部の感覚神経レセプターがその空間内で化学的、ならびに電荷的に関わり合い相互の関係性を構築することで、いわゆる「Fasciaが繋がっている」とという捉え方ができます。
膜の繋がりというよりも、運動機能的にどう関わっているか?
と考慮した方が、良さそうです。
まだまだ未解明の多い分野ですから、可能性を秘めている組織であるとともに、その認識の過大評価も気を付けなければならない部分です。
参考論文
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30417344
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30417344
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30765920
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31001134
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31499386
https://bjsm.bmj.com/content/52/23/1497