TVなどのマスメディア、InstagramやYouTubeなんかでもよく見かける文言。
- 骨盤の歪みは万病の元
- 腰痛や肩こりの原因は骨盤の歪み
- 骨盤の歪んでいると太る
- 左右の脚の長さが違います、骨盤歪んでますね
という文言を見かけたことがあるのではないでしょうか?
実際に聞かれることもあります。
実際のところはどうなのでしょうか?
医学的に骨盤が歪むという表現は適切ではない
医学的に骨盤は歪むという表現は適切ではありません。
解剖学上、あれほど強固な結合組織により保護されている骨盤帯が構造上歪むという事は考えにくいです。
交通事故や高所からの転落事故などで、骨折などをして変形してしまって構造上骨盤が歪むということでしたら考えられます。
ところが、骨盤帯に付着する結合組織の機械受容器や感覚受容器の影響で、骨盤帯の位置覚の変化や骨盤帯の動きの変化が起こる可能性はあります。
骨盤帯の位置覚の変化や骨盤帯の動きの変化が起きたとしても、骨盤が歪んでいると表現するのは妥当ではないでしょう。
確かに過去の文献では、ご献体での解剖的な研究では、骨盤帯の可動性はわずかにありますが、こんな感じ(骨盤の歪み 画像検索)で骨盤が歪むと考えるのは無理があるのではないでしょうか。
この画像のような構造上の問題を、「骨盤矯正」などと標榜して、「出ている骨を押し込んで戻す」のような感じで骨の出っ張りを動かすのは物理的に無理があるでしょう。
「出ている骨を押し込んで戻す」そんなイメージで骨盤矯正などとしたら物理的に骨や結合組織が破壊されてしまうでしょう・・・・
そもそも骨盤矯正と標榜されている手技自体が、本来はこのような物理的な問題を改善するというものではないのです。
骨盤帯への手技自体、骨盤帯の構造上の問題を解決するのではなく、骨盤帯の関節受容器への刺激による求心性インプットが目的です。
骨盤矯正という名の骨盤帯への手技自体、そもそも勘違いをして行っているセラピストが多いのが問題ではないでしょうか。
個人的に、骨盤矯正という名前自体が誤解を招いていると思います。
普通に「骨盤帯への手技・介入」で良い気がするしますがマーケティング的には「骨盤矯正」と書いてある方が売れそうですもんね(笑)
骨盤矯正というイメージの良くない名前が一人歩きしてしまい、骨盤帯への手技や介入というのは、どうも印象が良くありません。
このような側面を見て、鬼の首を取ったかのように
- 骨盤は歪まない!
- 骨盤帯への手技は意味ない!
- 関節受容器への刺激は意味がない!
などに収まってしまいがちです。
骨盤帯は固有感覚受容器が密集する場所でもありますので、骨盤帯への介入が不十分になる可能性も高いのです。
骨盤は動く? 動かない?
骨盤が動く・動かないというのは、ほぼほぼ仙腸関節を指している文献などが多いです。
ところが、SI Joint(仙腸関節 sacroiliac joint)からPelvis(骨盤)に検索ワードを変えるだけで、骨盤の動き(特に歩行)で多くの文献が出てきます。
これは骨盤単体ではなく、LPHC(腰部骨盤股関節複合体 Lumbo-Pelvic-Hip Complex)として大きな可動性を担うからだと考えられています。
また、骨盤の動きを検査する文献レビュー、メタ解析などでは骨盤の評価法は微妙な感じです。
「押して主観的に感じる変化」しか信頼性が高くて妥当な評価方法はないようです。
脚の長さと骨盤の歪みは関係ある?!
勿論解剖学的な脚長差というものはあります。
さまざまな脚長差を見る方法はありますが、 信頼性には欠けます。
私自身、習ったばかりの頃は使っていましたがこの10年くらいは全く使っていません。
脚長差だけで事象を読み取り判断をするということ自体無理があります。
”The unloaded, functional leg-length alignment asymmetry is a likely phenomenon“
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16080787/
「寝た状態の脚長差は現象、 骨盤帯に関わる筋の影響です」ということです。
「脚の長さが違いますね。骨盤歪んでますね」 ではなく、脚の長さが違う現象になっているということです。