実は斜角筋と肋間筋は呼吸にも関わる筋肉です。
基本的に、安静時の吸息は、斜角筋と肋間筋に横隔膜を加えた筋肉で行います。
安静時の吸息は、約70~80%は横隔膜をの働きによるものです。
安静時の吸息の20〜30%は、斜角筋と肋間筋で行っています。
安静時の吸息で横隔膜の活動が低下すると、斜角筋と肋間筋の活動が増えるということです。
横隔膜の活動が低下して、斜角筋と肋間筋の活動が増えると、首の痛みや肩こりや背中の痛みの原因になることもあります。
この記事では、メカニズムを詳しく解説します。
斜角筋の解剖学
斜角筋は前、中、後の3つで構成されます。
- 前斜角筋 第1肋骨と頚椎3~6横突起結節に付着
- 中斜角筋 第1肋骨と頚椎2~7横突起結節に付着
- 後斜角筋 第2肋骨と頚椎4~6横突起結節に付着
頚椎が固定されていれば、肋骨側を引き上げるように作用します。
もっと言うと、胸郭を引き上げる作用です。
また、胸郭を引き上げるということは、胸郭を拡げる動きです。
斜角筋が働くと、胸腔内容量を増やし、吸息筋としての役割を果たしています。
先ほども書きましたが、横隔膜の働きが低下した場合、代償動作として、斜角筋で強く引き上げる動作を行います。
斜角筋による胸郭の引き上げの繰り返しは、慢性的な斜角筋の緊張を作り、首こりや肩こりの原因になるわけですね。
肋間筋の解剖学
肋間筋は、内肋間筋、外肋間筋と最内肋間筋があり、3層構造になっています。
- 外肋間筋 吸気時に働きます。
- 内肋間筋 呼気時に働きます。
外肋間筋は最も表層にあり、上位肋骨の下面から始まり下位肋骨の上面につきます。
走行は外腹斜筋と同じで内下方に向かいます。
内肋間筋は内腹斜筋と同じ走行をし、外肋間筋と垂直に交わるようになっていて内上方に向かいます。
最内肋間筋は最も深層にあり内肋間筋と同じ走行です。
肋間筋の作用は、胸腔を拡げることです。
外肋間筋が吸気時に働き、内肋間筋が呼気時に働くことになっていますが、吸気時に両方働くとの文献もあります。
個人差があるのかもしれませんね。
また体幹の回旋にも関与します。
外肋間筋は外腹斜筋と、内肋間筋は内腹斜筋と同様の回旋を果たします。
また、肋間筋の大きな働きは、肋間腔の安定化があります。
胸郭(肋骨)の可動性がなくなると、斜角筋や背筋の活動が増え、肩こりになりやすい
臨床上、胸郭の可動性がなくなり、本来の動きが失われているケースをよく見ます。
男性より女性に多い印象です。
肩こりを訴える方が男性より女性の方が多いのも、胸郭の可動性がない方が多いからかもしれません。
呼気や吸気で、胸郭の動かない場合、胸郭の引き上げが強くなり、斜角筋を始めとした首の筋肉や背筋も使います。
慢性的に斜角筋を始めとした首の筋肉や背筋を使い続けていると、慢性的な肩こりの原因になります。
胸郭の可動性は軽視されがちですが、非常に重要です。
まとめ
斜角筋はできる限り頭頸部の安定に働いてほしいので、なるべく普段の安静時呼吸では使いたくありません。
呼吸で肋間筋や斜角筋を使わせないようにするには、肋骨の可動性、滑走性、横隔膜の機能が確立されている必要があります。